タムケンブログ

コンテンツの未来について、好きなコンテンツについて、書き記します。

ハルヒ×朝日全面広告に見る、サブカルがメインカルチャーに脱皮する2つの条件

朝日新聞朝刊に涼宮ハルヒの全面広告が出た件

本日7月7日付けの朝日新聞朝刊第5面に、ローカル局深夜アニメで大ヒットした『涼宮ハルヒの憂鬱』のパート2が出るぞ!という旨の全面広告が角川書店の手によって出ました。
文言としてはアニメには触れず、ハルヒのうしろ姿の絵を背景に「私は、ここにいる」「ハルヒ二期決定!」とデカデカと書かれています。下の方に原作のライトノベルシリーズ・関連雑誌・ハルヒ役の声優、平野綾の写真集*1の紹介。角川の広告なのでアニメについて・アニメ第一作のDVDに関しては記述なし。最後にHPのURLとともに、「本日夜9時頃、何かが起きる」と記されて終わり。

末尾に

(c)2007 谷川 流・いとうのいじ / SOS団

とあるなど、知らない人には謎すぎる内容。これが主要紙朝刊の5面、政治面の真横に鎮座しているわけです。

情報が非常に少ないため、「ハルヒ二期決定」と聞いて「あ、アニメ続編出るんだ(7月18日訂正、アニメ続編とは発表されてなかったです)あ、アニメ続編でるのかも」とわかるファンにしかわからない謎めいた広告ですが、深夜アニメ・ラノベ作品というサブカル中のサブカルが主要紙の一面を丸々飾ったのは事実です。前代未聞。


思わずtwitterに書き込んで少し話したりしたのですが、そこで思ったのはハルヒはついに脱サブカル化するのか、ということ。サブカルがサブカルでなくなる瞬間を目撃したような衝撃を受けました。

サブカルとメインカルチャーのあいだの越えられない壁

でも、サブカルがメインカルチャーになった瞬間を想像すると、超えられない壁があるように思います。特にマス向けでないコンテンツが簡単に瞬時に手に入る今は。


具体的にサブカルがメインカルチャーに脱皮した瞬間を考えてみます。例えば(ないと思うけど)ハルヒがキー局のゴールデンにアニメ放映したとして、それを見た中学生がもっと詳しく知りたいと思った、という状況。。

とりあえず、携帯で検索する。googleモバイル。公式サイトは無く、公式に近い大手サイトも出ず、上位表示されるのは勝手サイトのランキングサイト。クリック。
ランキング上位のをとりあえず見てみる。クリック。同人ページ到着。はいはいサブカルサブカル。下手したらアダルト同人に直結します。極めて不健全。


昔ならば、テレビ・雑誌という巨大なマス・メディアがオフィシャルな情報を押し付け、消費者はそれを自然に受容するわけですから、広がりは無くともまともな成長を意図的に行うことができた訳で、これは確かにつまらないですが、健全ではあります。もちろん同人はずっと昔からあったけれど、数少ない書店の奥まったほうとか、特定コミュニティとか、コミケとか、手の出しにくいところにあったけれど、今は時代が違う。

Web2.0的、国民総発信社会において、容易に拡大が可能になったサブカル。ハルヒがこんなに大ヒットしたのは「タムケンブログ - メディアミックス大王カドカワが携帯動画に殴りこみだそうで」でも書きましたが、ユーザーの発信によるクチコミなどの力によるものでしょう。でもその総発信の力こそがメディアのマスパワーの相対的減少を生んで、アクセス容易な勝手サイトという越えられない壁を作り、サブカルをサブカルに永遠に押し付けるとしたら、皮肉なことです。

もちろん勝手サイトの広がり・雑多感こそがそのコンテンツの大きな魅力であることは確かです。でもそれはトップに来るべきものではないでしょう。万人のためではなく、それこそ「嘘を嘘と見抜ける」人、「パロディをパロディと認識して、意識的に楽しむ」ことができる人だけがアクセスできる状態。これが実現されない限り、サブカルはメインになるべきではないと僕は思います。

全面広告を出す=メインカルチャー化というのは直感的には理解できるけど、今はその後のことを考えるとメインカルチャー化のフックにはなってもそれ以上にはなれないなとよく考えてみて思いました。まぁ、ハルヒはメインカルチャーになるつもりなどさらさら無いでしょうし、ファンもそんなこと思ってないでしょうけどね。

サブカルがメインカルチャーに飛躍する2つの条件

要は単純に二つ。

公式たくさん作れ
検索とかのユーザー誘導の考え方・思想を改める
公式たくさん作れ

ユーザーが得る情報の純度を高めるひとつの方法であるマスアプローチはどんどん難しくなってます。テレビとか普通に見ないし。
だから、主な導線にはちゃんと気を配って、複数オフィシャルコンテンツを置いていくこと。PCはもちろんモバイルでもオフィシャルサイト作って上位表示、コミュニティでも例えばmixiのオフィシャルコミュニティ出すとか。歌手にとってのレコード会社と所属事務所のように、オフィシャルっぽいのが複数あればちゃんと複数出して検索上位を占めておくこと。
メディアミックスをプラススパイラルを伸ばすためじゃなくて、純じゃないのを隠すために使うというわけ。

検索とかのユーザー誘導の考え方・思想を改める

そもそもモバイルで物を調べるためのシステムが悪いのが原因で。思うに、万人向けであるがゆえにリテラシーの平均値が低いモバイルに、リテラシー高めのPCで一般的なロボット検索を持ってくること自体がミスマッチで。
なんか新しい導線の仕組みが発生してよいと思います。人の手による選別とか。

ちなみに

頭でしゃべった全面広告ですが、こちらで見れます。その後の話も。
北の大地から送る物欲日記 - 涼宮ハルヒの憂鬱、第ニ期の新聞一面広告

*1:これが書籍紹介の中ではド真ん中。どんだけー