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タムケンブログ

コンテンツの未来について、好きなコンテンツについて、書き記します。

『みんなの就職活動 ウリ専はじめました』に見る、ケータイ小説で重要な4つのこと


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今回は第一回目です。なんか献本っていうとアルファブロガーな気分で楽しい。



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書評/ライトノベル

今回本書を読むテーマ「ケータイ小説が読まれる理由を解明する」

私は文芸、特に近年の純文学は特に読むので、ケータイ小説に当初批判的でした。でもなんか恐ろしい勢いで売れているわけで。
これはケータイ屋としては黙っていられないぞwということで、ケータイ小説が面白いとされる原因を探ってみたいと思う。

どういう本か

ケータイlivedoorで掲載されて書籍化された、いわゆるケータイ小説。
多くのケータイ小説でみられるように、「痴話⇒問題起こる⇒泣ける結末」なストーリーなのだが、この作品では痴話的なところが記号的に使われているような印象。この話ではタイトルにあるとおり男が男を買う「ウリ専」が痴話担当として出てくるわけですが、その男と男の間の愛情みたいなのは本筋ではない。

形式

この作品は見開き2ページで一話。横書きで間隔も広いので、原稿用紙3枚くらいでワンシーンになる。
凸編と凹編があって(凸と凹の意味は、まぁご想像の通りw)各編が交互に出てくる。凸編1話、凹編1話、凸編2話、凹編2話…といった感じ。ほぼ同じ時系列の同じ場面を、二人の主人公の立場から交互に描かれている。

この形式をどう読むか

2つの物語が平行して進んで時に交じり合ってというストーリーは「冷静と情熱のあいだ」などに見られるが、本作は1シーンが極端に短い。
片方の物語を先に読んでしまうこともできるが、片方のストーリーを読んでしまうとオチが見えてしまうので、そのまま編集の意図通り2つの物語を交互に読んでいくことを勧める。恐らく携帯で更新されたときも交互に連載してたのだろう。

考察:ケータイ小説的なテンポ

ケータイ小説特有と思われるのが、基本的に一人語りとあいての発言の繰り返しであること。圧倒的に地の文が少ない。情景描写がない。深みがないとも言えるが、それを補って余りある抜群のテンポのよさは秀逸。
実際ケータイで小説を読んでみると分かるのだが、画面が小さいため一部を読み飛ばす事が難しい。だから本筋に絞って3枚で一旦まとまる(ケータイ画面だと4ページくらいか)のだろうと思う。

考察:超短期で回収される露骨な伏線

同じ情景があった時、違う表現で描くのではなく、露骨に同じ表現が多用されている。従来の書籍の場合伏線に気付いたときにすぐ読み返すことができるが、ケータイで読むとだと後ろの文を振り返りにくくそれはできない。読み返すまでもなく伏線とわかるようにあえて表現を重ねていく手法は面白い。具体的には…

例1:「馬場ね、高田馬場。分かるでしょ?」(中略)おれは山手線を降り、夏の容赦ない太陽の下、指定されたファミレスに向かう。駅前には早稲田の学生か、リクルートスーツ姿がちらほら。

例2:新宿で山手線に乗り換えて、そのまま高田馬場へ。電車を降りる瞬間、むっとした空気が体にからみつく。改札口近く、早稲田の学生らしいリクルートスーツ姿の奴らも、見るだけで暑苦しい。

こんな感じ。

考察:登場人物の状況が同じ軸で説明できる

・恋人と仲直りする金欲しさに男に抱かれるノンケ男
・恋する瀕死のノンケ男を長生きさせるための治療費欲しさにウリ専に走るゲイ男
・愛するものの為に体をゆだねようとする人物

…といったように、「ここで感動するんだよ」的な軸が明確。偉い文学者とかは怒りそうだけど、大衆文学としてこの割り切りはむしろ美しい。類型化しやすいから、メッセージもわかりやすい。「泣ける」ベストセラー。その通り。

考察:ケータイ小説が痴話ものばかりな理由

他のケータイ小説をざっと見て思ったけれど、痴話ものばかり。表現もすごい露骨。ほとんど官能小説といって良い感じ。冒頭でも述べたとおり、「痴話⇒問題起こる⇒泣ける結末」というのが非常に多い。

この感覚はエロゲーに非常に近いと思う。エロゲーやる人たちがストーリーの濃い、いわゆる「泣けるエロゲー」をやるのと同じ。今まで恐らくあまり一般的な小説をひととおり読んだ事がない人だからこそ、ベタな泣き要素で「超感動」になれる。そういう人でも入り口として痴話があるからこそ入り込める、と。
恐らく重要なのは「泣ける要素が技巧的か」ではなく、「いかに他のエンタメにスムーズに連結しているか」

考察:中2病的ストーリー

テンポが命の小説なので、ネタバレした時点で読む気が失せると思われる。従ってストーリーの詳細を述べることは避けるが、非常に中2病的な青春ストーリー。
「メディアとか糞だよ、ぶちこわしてしまえ」的な。世の中のオトナの汚さを知った若き主人公たちが世の中に憤りを感じて戦っていく。感覚としては宗田理「ぼくらの〜」シリーズに近い。

結論:ケータイ小説で重要な4つのこと

つかみとして他のエンタメとスムーズに接続させる
ベタだけど泣けるオチを用意する。
伏線はとにかくわかりやすく。狙い通りに解釈を誘導する。
余計な部分を削ぎ落としてテンポ良く。「泣き」のオチにつなげる

この本はどういう人におすすめか

本書はボーイズラブ好きだけど一般的な小説は読みません、という方にベストマッチ。そうじゃないけど小説を普段読まない方は男女の痴話モノのケータイ小説を読むんだほうがいいかもしれない。正直性的描写はまともに追っていくと読んでてしんどかった。

ある程度小説を読みなれた方には、冒頭で述べたとおり性的描写を記号として捉えてしまうことを勧める。エロシーンは単調でそれ自体にあまり意味はないので。